プロローグ

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 一層強くなった水音のせいで、聴覚が彼女に支配されてしまったかのような感覚に陥る。彼女の手の動きに合わせて響く水音が、彼女の存在を脳に焼き付けていく。  聴覚だけではない。味覚はくちづけで、視覚は眼前に広がる彼女の身体で、嗅覚は辺り一帯に充満する彼女の匂いで、そして股間の触覚が彼女の輪郭を捉えている。五感で感じるその事実を改めて意識的に理解すると、より股間が熱くなった。 俺は今、ショゴスと性交している。  夢にまで見たショゴスとの性交が、現実となっている。これまでの半強制的な手淫とは違う、ショゴス主体の、合意の上での性交だ。彼女の名前を何度も呼びながら、彼女が陰茎を握る手とは別の手を、縋るように掴んだ。興奮を抑えきれていないのは彼女から見ても明白だろう。  彼女はというと、顔色を窺うかのように上目づかいで俺の顔を覗き込んでみたり、相変わらず股間をまじまじと見ていたり、目を背けて明後日の方向を向いたりしていた。
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