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高倉の手には買いに行くと言っていたシナモンが。
「あ、これ?
このメーカーのシナモンじゃなきゃ美味しくないんですよね。
ここにしか置いてなくて」
高倉はシナモンを大量にかごに入れると
「よしっ」と言って立ち上がった。
「僕はこれが買いたかっただけなので
あとは未乃さんの買い物に付き合いますよ」
なんともありがた迷惑な事になり
未乃はこの場から逃げたくてたまらなかった。
雅陽でさえ一緒に住んでいるのにも関わらずこんなに話したことはない。
未乃は慣れない状況が続き、自分が対人恐怖症だという事がバレないか隠すのに必死になった。
高倉との雑談は続けられながらスーパーを回る。
「未乃さん、一人暮らしですよね?
そんなに買うんですか?」
ようやく一通り必要な物をかごに全て入れ
レジに並んでいる時だった。
高倉が鋭い質問をしてきたのだ。
未乃は自分の持つかごを見ると確かに一人暮らしには多い量が入っている。
「あっ、えっと…か、買い貯めを…」
未乃は高倉の表情を伺いながら答えた。
すると高倉は思いついたように
「あー、僕が居るからか!
二人いればいっぱい持って帰れますもんね」
と言った。
「そ、そういう訳では…」
「ウソウソ!冗談ですよ。まに受けないで。
でも、今日は僕がちゃんと手伝いますから
頼ってください」
高倉はそう言うとお会計が終わった重い袋を
三袋も腕にぶら下げて来た道を歩き、家まで運んでくれた。
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