となりの住人

3/18
421人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
鏡の前に座り長い髪を掻き上げるように結く。 「未乃さん、髪切ったら?」 雅陽は鏡越しに未乃に言う。 「ちょっと、入ってこないでよ」 「入ってないよ、ほら見て」 雅陽は未乃の部屋まであと一歩のところで止めている足を強調して見せた。 未乃はじろっと雅陽を睨むとブラシを置いて 部屋を出た。 今は昼前。 挨拶に行くにはちょっと早すぎるが、 雅陽がこの後、家を空けるというので 早めに伺うことにした。 玄関を出てすぐ左の801号室。 雅陽がチャイムを押した。 『ピンポーン』 と音が鳴る。 『はい』とインターホン越しに声がした。 「隣に引っ越してきたので挨拶に伺いました。 いま、少しお時間頂けますか?」 『はい、今出ますね』 うっすら聞こえた声を聞いているだけで 未乃はただそこに突っ立っていることしか出来なかった。 『ガチャ…』 「わざわざすみません」 急いだ様子で部屋から出てきたのは ラフな格好にエプロンをつけた高身長の男性。 大人の男性といった雰囲気がある。 未乃は遠くから雅陽とその男性が話している様子を眺めていた。 と、その時、男性の目線が未乃に移った。 「あの人が802号室の住人の未乃さんです。 俺は代理のようなもので」 雅陽は頭に手を置きながらそう答えた。 未乃は男性に向かって頭をペコッと下げると 男性もそれに合わせて頭を下げた。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!