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それから俺たちは、場所を滅多に人の来ない橋の下に移し、現状を掻い摘んで説明した。
まず、いきなり左右異なる世界が見えるようになったこと。
そして、麻衣子の半身に見知らぬ女性――白装束で長い黒髪の、生気のない目をした女が見えることを……。
「……変なクスリでもやったの?」
「俺は潔白だ! 違法薬物に手を染めたりしない!」
「う~ん、まぁ、そうよね……智明がそんな勇気、ないか」
「勇気じゃねぇーよ! あれはクスリの誘惑に負けてんだから逆に意志弱いんだよバカか!」
「……誰がバカ、ですって?」
しまった禁句!
虚ろな女だけでも怖いのに、右側まで般若になってしまった!
ヤバイよヤバイよこのW妖怪の二重奏は……。
「ご、ごめんなさい、バカはワタシです。はい、そうですともワタクシめでございますよ、はい」
「分かればよろしい……それで? その智明に見えてる女の人って、まだ見えてるの?」
「あ、あぁ……相変わらず見えてるよ」
駅近くの交差点で数日ぶりに麻衣子と会ったあの瞬間――あのときから、俺の世界は左右で二分されてしまったまま。
「まぁでも、左目を閉じていればいつもの世界しか見えないから、眼帯でも買ってくればいい、のかな?」
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