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「どう、かしらね……妄想でも幻覚でもなくて、実際に見えているのなら、見えているものから目を逸していいの?」
「ごもっとも……悩みどころだ」
と言いつつ左目を閉じて考えこむ。
基本スタンスとしてはやはり閉じておきたいし……だって怖いし。
――くい。
え?
いまなんか、声が……。
「麻衣子? いま何か言った?」
「え? 何も言ってないわよ」
――にくい。
「……ま、まさか」
「なになに、今度はどうしたの?」
――憎い。
ハッキリと、聞こえてしまった。
声にならない声――恐らく、左目に映る彼女の、声が。
「いいいいいやななななんっか、さ……そそそそその、えええと、えとだな」
急に極寒の海にでも放りこまれた裸一貫小僧みたいに、俺は歯の根が合わずガチガチと震えまくって噛みまくって。
「――落ち着け」
麻衣子の【必殺フルスイング★ハリテ】により正気を取り戻す。
いや、しかし意識は手放しかけた……。
「ほら、言ってみな」
「だ、だってよぉ~!? いきなり『憎い』とかボソッと喋るから~!!」
「あ~よしよし。怖かったのね? うんうんそうよねーいきなりだと怖いわよねー」
棒読み麻衣子様に頭ヨシヨシされて慰められながら、俺は号泣。
あれ、俺何歳だっけ?
今年確か、十六歳になるんじゃなかった?
「落ち着いた? 大丈夫?」
「う、うん……」
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