割れて反転する世界

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「くぅ……なんで、こんなに力、強いんだよ!」 「開けろ……開けろ、開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ!!」  狂ったように『開けろ』を連呼してくる。  こうなったら、さすがに腹、括るしかないよな。  俺は閉じていた左目を、開いた――  白装束の女が、半分ではなく【全部】になっていて。  途端に、世界がひっくり返る。  表が裏に、裏が表に。  それまで見えなかった世界……いや、そこに在ったのに、ずっと目を逸していた世界が、色濃く像を結ぶ。  鮮明に、鮮烈に。 ――見えたのは、江戸時代くらいだろうか。  大きくて立派な商家。  商売は繁盛していて、暮らしは裕福で、欲しい物はなんでも揃う。  けれど、そこで産まれた一人の少女は、できそこないと蔑まれていた。  四男三女の次女として産まれた彼女は、他の兄妹に比べて容姿は酷く、勉学も覚えが悪いし、武術ができたわけでもない。  叱られることはあっても生涯褒められたことはなく、そんな生活では心も荒む。  荒んだ心ではどんどん人相も悪くなって、しまいには【子を為す道具】として他家に二束三文で売られたが、結局子供もできずに山に捨てられて死んだ。 ――だから、憎い。  そんな仕打ちをしたアイツラも。  その子孫である、オマエラも!     
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