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「君の悲しみは、傷跡は、何一つ無駄じゃないから!」
人は傷ついた分だけ痛みを知る。
そして傷ついた分だけ、人の痛みが分かるようになるものだ。
人の痛みが分かれば、それだけ優しくなれる。
ならこの人は――
「優しい人だよ、君はさ……その優しさは、痛みに耐えた君だけのもんだよ。持ってるよ、君は! すげー綺麗なモノを、持ってるだろ……」
その証拠に、もう麻衣子の両手は、力無くだらりと下げられていた。
全身に入っていた力も、いつの間にか緩んでいて。
「……智明」
「え? 麻衣子?」
気が、ついたのか?
俺は抱擁をやめて、麻衣子の顔を見ると――
「なに抱きついてんのよ! この変態ッ!!」
「ぶへっ!?」
またも【必殺フルスイング★ハリテ】が炸裂し、豪快に吹き飛ばされた。
「いっっっっってぇぇぇぇ……!」
二度目。
同じ左頬に二発目とか……。
やべぇ、また泣きたくなってきた。
なんで?
俺、頑張ってあの子励ましてたのにさ。
どうしてこういうオチになるんだよ?
麻衣子、何も覚えてねぇの!?
「ったく……なんて顔してんのよ。ほら、行くわよ?」
「ほへ?」
「ほへ? ……じゃないわよバカね。もうお昼でしょ? 変なことに付き合わせたんだから、お昼くらい奢りなさい」
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