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割れて反転する世界
あれ?
右目と左目、映る世界が違う……。
「君は、誰だ?」
「え? 私は麻衣子よ。いまさら何を――」
「そうじゃなくて!」
右目に映る幼馴染の麻衣子は、いつも通りなんだ。
そんなことは分かっている。
問題は、左目に映る――見知らぬ女性が、麻衣子の半身を占領していて。
ワケが、分からない。
「んー? もう、どうしたのよ智明? 何か変な拾い食いでもしたの?」
春っぽい桜色のカーディガンを羽織る彼女は、ふわりと巻いたショートボブを揺らして、心配そうに俺の顔を覗きこんでくる。
しかしその仕草は半分――虚ろな目をした白装束の女で。
「ひっ――!」
「ど、どうしたの? ホントに大丈夫? 凄い汗、かいてるけど……」
「ま、ま、ままま待ってくれ! ちか、近寄らないで、頼むからッ!!」
真っ昼間の往来の真ん中で、尻もちをつき声まで裏返ってしまったが、そんなことを気にしている余裕はない。
こんな怪奇現象には不慣れなんだ。
「な、失礼ね……どういう意味よ?」
「すまない、なんというか、あぁ……説明できる気がしないんだけど」
「何か理由があるのね? ゆっくりで良いから、言って?」
「わ、わかった」
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