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背後から声が聞こえた。後ろを振り向くと、見たことがない女子が四人立っていた。見た目は派手で、ミワと似たような髪型、服装だった。
「アナタたち、誰?」
「私たちはミワの友達」
後から来た女子の前に、ミワが割り込んできた。
「これは金を賭けたゲームなの。ユイの友達ってことは、大人しくて良い子ちゃんに違いない。世間も知らないんだろうなって。ちなみに今回は私とユイの勝ちだけどね」
もう一度ユイを見た。
「ユイも、賭けてたの?」
「ユイに訊かないでやってくれよ。どうやって刺激したらいいかいろいろ考えたんだ。もちろんユイの言葉通りにね。ユイはキミのことを大切にしてた。良く見てた証拠だ。だからこういう話が騙しやすいってのも考えられた」
ユイは俯き、なにも言わなかった。ただただ、小さくなって震えていた。
わけがわからなかった。
中学一年の時、アキホの席の後ろがユイの席だった。読書と映画が好きなのもあって、二人で話に花を咲かせた。
一緒に勉強をし、一緒に遊んだ。キャンプや修学旅行でも同じ班で、三年間仲良くやってきた。
楽しかったはずの思い出が、今、目の前で、崩れ去った。
奥歯を強く噛み締めた。
目の前のミワや女子たちを押しのけて駆け出した。階段を三段飛ばしで駆け下りた。着地に失敗して転げ落ちてしまった。
地面に手をついて身体を押し上げると、ポタリポタリと赤い染みができていく。
右腕で鼻を拭った。
体中が痛む。けれど、それ以上にここから逃げ出したかった。
周りの目など気にせずに店を出た。それからがむしゃらに走り続けた。考えることはいろいろとあるけれど、今はユイのことしか考えられない。
友人とはなんだったか。楽しい時間とはなんだったのか。信じるとは一体どういうことなのか。
家に入って、すぐに自分の部屋に向かった。ドアを開けてベッドに飛び込む。タオルケットを被り、目をぎゅっとつむった。
「アキホー、どうしたのー?」
階下から母の声が聞こえてきた。けれど無視した。
返事がないからと、母が部屋までやってきた。
「返事くらいしなさい」
「わかった」
「わかったじゃないでしょ。わかり――」
「うるさい! もう出てってよ!」
アキホが叫ぶと、母は「ごめんなさい」とだけ言って出ていった。
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