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そこには俺と同じような恰好をした連中がいた。
ダンボール紙製の甲冑を着た中年重装歩兵…エロ担当としか思えないビキニ型アーマーの女戦士…とんがり帽子が痛々しい紫のローブの少女魔導士…そして極めつけは、どこから見ても不審人物な、顔まで隠した黒ずくめの忍び装束の男だ。その誰もが普段は中小企業の営業マンにキャバクラのホステス、ボーイズラブ同人作家に引きこもりニートだとは思えない。
そいつらと合流した俺は、やって来た地下鉄に乗って、目の前の吊革を握った。
その地下鉄には不思議な事に、俺達奇妙な姿をした一団…傍から見れば、“イベント会場に着いてから着替えるのも待てないほど、気合いの入ったコスプレイヤーのみなさん”しか乗っていない。
地下鉄が駅を発車して程なく、俺は隣の吊革につかまった中年重装歩兵に話し掛けた。
「そう言えば…先日仰ってた、近々大事な商談があるというお話。どうでした?」
ダンボールの甲冑を着た中小企業の営業マンは、軽く頭を下げて応える。
「ええ。おかげさまで、なんとか契約にこぎつけられそうです」
屈託のない笑顔だった。そして俺達は白くまばゆい光に包まれた。
次の瞬間、地下を走っていたはずの電車は晴天の下、広大な田園風景の中を走っている。やがて電車は駅のホームとも船の桟橋ともつかない、古びた木製の建造物に滑り込んだ。ドアが開き、俺は一緒に電車に乗り込んだ“コスプレ仲間”に声を掛ける。
「さあ、今日もやるか!」
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