勇者の出陣

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 カーテンとダンボール紙とプラ板で出来た勇者の装備は、時空の壁を超えた際に本物に変わっている。無論、他の連中も同じだ。  澄み渡った青空に、白く大きな鳥が二羽、大きな円を描いて優雅に舞っている。求愛の舞いなのかも知れない。  その蒼天の元、広がる緩やかな緑の草原には、暗黒竜の旗を立てたオークやコボルド、サイクロプスといった魔族の軍団が陣を整えている。俺は背負っていた大剣を握り取り、ぶるんと大きく、ひと振りした。意味はないが、まあ、景気づけというものだ。  中年重装歩兵は巨大な槍を、女戦士はバトルアクスを、少女魔導士は宝石を埋め込んだ魔法杖を、そして忍び装束の若者は両手にアサシンダガーを構える。 不満は多々あるが仕方ない。俺達は“選ばれし者”なのだから。 この世界の滅亡は、俺達の日常世界の滅亡になるのだから。 かくして今日も魔王軍と戦う、俺達の一日が始まった……… 【おわり】  
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加