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カーテンとダンボール紙とプラ板で出来た勇者の装備は、時空の壁を超えた際に本物に変わっている。無論、他の連中も同じだ。
澄み渡った青空に、白く大きな鳥が二羽、大きな円を描いて優雅に舞っている。求愛の舞いなのかも知れない。
その蒼天の元、広がる緩やかな緑の草原には、暗黒竜の旗を立てたオークやコボルド、サイクロプスといった魔族の軍団が陣を整えている。俺は背負っていた大剣を握り取り、ぶるんと大きく、ひと振りした。意味はないが、まあ、景気づけというものだ。
中年重装歩兵は巨大な槍を、女戦士はバトルアクスを、少女魔導士は宝石を埋め込んだ魔法杖を、そして忍び装束の若者は両手にアサシンダガーを構える。
不満は多々あるが仕方ない。俺達は“選ばれし者”なのだから。
この世界の滅亡は、俺達の日常世界の滅亡になるのだから。
かくして今日も魔王軍と戦う、俺達の一日が始まった………
【おわり】
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