fd1 父親になりました!

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襖の奥からなにやら 親戚のおじさん達が、言い争っているようだ。 「あの子を誰が引き取るかだが、 そっちで引き取ってくれないか?」 「俺らの所は、金銭面的に無理だ、 そうだ、真奈美お前のところはどうだ?」 「無理よ!あたしの息子だって今年 大学受験なのよ!そんな余裕はないわ!」 「じゃあどうすればいいんだ??」 「いいじゃない、施設にでもいれれば!」 「あの子の母親だって、蒸発して、 なにがあるかわかったもんじゃない!」 (なんだよ、これっ!あの子がなにを したっていうんだよ!) 俺の中でイライラと不信感が強まっていくのが わかった。すると廊下の奥から親父とおばさんが 歩いてくるのが見えた。 「涼太どうしたんだ?」 「あら、涼太君こんなところで立って なにかあったの?」 「親父、おばさん…。」 親父とおばさんはなにも言わない俺から 襖の奥に目を向けわかったように言った。 「あぁ、あの子のことか。」 「………。」 「あの子が産まれたばかりの時、母親が蒸発。」 「その次は、父親まで亡くなった。みんな 気味悪がって引き取ろうとしたいんだよ。」 「なんでだよ!あの子はなんも悪くないだろ! あの子だってすっげぇ悲しんでんだぞ!」 「涼太…。」 怒りが収まらない俺の耳に拍車をかけるように 襖の奥から嫌な声が聞こえてきた。 「じゃあ、施設に預けるということでいいな。」 「いいわよ!あんな疫病神みたいな子、 そっちに行ってくれたほうがスッキリするわ!」 それが聞こえた瞬間、俺の中でなにかが 切れた音がした。
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