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すっかり身体も快調になった十夜は、約束の日に手紙に記された場所へ赴いた
「ここか…」
電車で1時間程移動し、辿り着いた場所は、大きなガラス張りのビルだった
三つの棟が、隣接しそれぞれに橋が架かったそのビルは、外観だけでもかなりの広さがある事がわかる
「でけぇな…場所間違ってねえだろうな…」
恐る恐るフロントサッシの前に立ち、自動ドアの開く位置へと足を伸ばす
勢いよく開いたドアにビクッとしながらも先へ進む十夜
エントランスらしき場所に案内人のような女性がニコニコと座っていた
「ようこそ、ご連絡はいただいていますか?」
「あっ、あーっと…今日来る予定の連城十夜す」
「はい、少々お待ち下さい」
眼前のモニターに目をやり、何かを調べだす女性
「お待ちしておりました。連城十夜さんですね。6階のB会議室へとお願いいたします。向かって右手にエレベーターが御座いますので、上がっていただいて降りたところを右へお進み下さい。ドアが開いてる所がB会議室です」
「ども…」
促されるままエレベーターに乗る十夜
かなり速いエレベーターは一瞬で6階に着き、言われた通り右のドアの開いている部屋へと入る
「失礼します」
一応、誰もいないが一声かけて入る
「…誰もいねえし」
「お、来たな!連城十夜!!」
!?
背後から、渋い男性の声が聞こえてきた
「っ!!よ、よろしくっす!」
「クックッ!そんなに畏まんなよ!俺の名前は宇部だ。一応アークスの総団長を任されてる。言わばこの組織の親玉だな」
(総団長…って事は、一番偉いんかよ、このおっさんが!?)
短い銀髪にくわえ煙草と無精髭の男性にその風格を感じなかった十夜は、思わず顔が強張った
「思ってる事が顔に書いてんぞ」
「えっ?いや…」
「ハハハッ!!まあいい、これから宜しくな?」
「宜しくお願いします…てか、なんか試験とかないんすか?」
「本来なら、研修校を通って試験をしてから初めてアークスになれるんだが、お前は推薦枠だからいいんだよ」
「…いやいや、何でなんすか?俺なんの能力もないすよ」
「細胞値が異常に高いんだろ?」
「いや、でも別に強くもなんともないっすよ?」
「ここにいたらいずれ分かる。細胞値が高いってことの、その有り難さがな」
「…はぁ…」
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