10人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
「柾木って野郎の写真はあるか?」
「はい、こちらになります」
ホワイトボードの前にスクリーンが現れる
プロジェクターが点灯し、スクリーンに一人の男が映し出された
男は中肉中背の無精髭を生やした黒い短髪で、これといった特徴もない。強いて言えば、目の下のクマが酷い
「柾木 兵吾 41歳 現在は無職です。アークスに所属していたのは4年ほど前になりますね…アークス在籍時も目立った功績等無かったので、彼自身に強大な力があるとは思えません。が…」
「が??」
「もう一枚、写真を映します」
パッ
また新たな人物の写真が現れた
今度は、綺麗な顔立ちをした青年だった
髪は金髪で、耳にピアスをしている
「こいつは……!」
「この方はご存知かも知れませんね
数年前世間を騒がせた罹患者…
幾島 霧斗です」
「幾島…!!」
「…誰なんすか?」
十夜が尋ねた
「数年前に大量殺人を犯しながら未だに捕まってねえ殺人鬼だ…
その残忍な手口は世間を震撼させた…厄介な事にこいつは、帰克者だ」
「帰克者…つまり、ダークナイツ並って事ですか?」
「そう言っても過言じゃねえな…」
「…剣屋の野郎…ヘマしねえといいが…」
「…鴫田さん」
「んぁ?」
「さっきの剣屋ってオッさんは強いんすか?」
「オッさんて…まだ20代だぞあいつ…
まあ、強えよ。ダークナイツでも上位だなーー口は悪いし態度もでけえが、実力は本物だよ」
「…鴫田さんよりも?」
「それはねえかな!」
「だが幾島も…かなり強いはずだぜ…なんせ、当時奴は…」
ダークナイツを一人、殺してるーーー
ーーーー神奈川県 横浜市
赤煉瓦倉庫が立ち並ぶ有名観光地、その近くの高いタワーの展望台から、眼下を眺める耳に赤いピアスをつけた金髪の男
「相変わらず素敵な街だ…広大な海、高層ビル、賑わう街…全てが生を彩っているね」
「…だけど、一つ足りないものがあるよね…」
おそらく付き人であろう後ろにいる初老の男が尋ねた
「…なんでしょうか?」
「ーー恐怖だよ…
恐怖こそが最も生を彩るファクターさ…
恐怖を失った人間は、死者と同じ」
「何かに怯え生きる毎日こそ、意義を見出し輝くんだ。そうだろ?」
「…霧斗様の言う通りですね」
「さて、と。じゃ、彩ろうか…久しぶりに」
人々に巣食う恐怖を以って、輝ける生をーーー
最初のコメントを投稿しよう!