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派遣社員としてこのコールセンターに入って八ヶ月目。基本はエンドユーザーからの受注電話を受ける仕事なのだが、たまにこういったクレーム電話に当たってしまう。そうすると十中八九私だけでは手に負えず、チーフを頼ることになってしまうのだ。
隣の田中さんが自分の電話を終えてこちらを振り返った。
「また当たったの?」
「は、はい……」
「そんな風にオドオドしてるから付け込まれるの。もっと自信を持って応対しなさい」
「は……い。すみません」
田中さんはヘッドセットを外し、「それよ」と腕を組んだ。
「山田さんのすぐに謝るところ。謝れば良いってもんじゃないのよ? 心のこもっていない謝罪は相手の気持ちを逆撫でするだけなんだから」
「はい。すみ……」
また謝ろうとして口を噤んだ。田中さんは嘆息してPCに向き直る。その隣ではチーフがクロージングに入っていた。
「ええ……はい……ありがとうございます。古川様の仰る通りでございます。これからも弊社の商品をよろしくお願い致します。失礼致します」
チーフが電話を終え、ヘッドセットのコードを外した。そして私の方を振り返りにっこりと笑った。
「終わったよ、山田」
「ありがとうございますっ。申し訳ございませんでしたっ」
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