ほら、そこに追随者が……

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 最近は少しずつ夏が近付いてきていると感じる。早朝でも少し歩くだけで汗をかくし、太陽も随分と早くに顔を出すようになった。来月には1年で最も日が長い、夏至を迎える。  私は数年前から健康を意識し始め、早朝のウォーキングに出掛けるようになった。近所に小学校のグラウンドくらいの広場を見つけ、毎日のように通っている。 「あー、今日も朝陽が気持ちいい!」  太陽の光を正面から受け、その清々しさに思わず声が漏れた。でも、広場の中央付近には誰もいないからいい。この時間、この場所は私だけの物になる。  ふと、背後に視線を感じた気がした。今日は珍しく誰か居るのかと思い、先ほどの大きな独り言が恥ずかしくなる。  慌てて振り返るが、そこには誰も居なかった。  気のせいか……そう思っていると 「……………………ってよ」  女の人のような、何か呟いている声が聞こえた。しかし、辺りに人影は無い。どころか、ただ広いだけのグラウンドには草木の1本も無い。  私は急に怖くなって、この場を離れたいという衝動に駆られた。 「…………代わってよ」  今度ははっきりと声が聞こえた。誰? と叫びたくなったが、あまりにも鮮明に聞こえた為にすんでのところで言葉を飲み込む。反応したら駄目だ。声を掛けては駄目だ。直感でそう思ったからだ。  周囲を警戒しながらゆっくり、ゆっくりと広場の真ん中から移動を開始した。しかし、ソレの存在に 気付いてしまった……  声の主が何処かから現れるかも知れない。そう思って辺りを見回しながら広場の端を目指す。太陽に背を向けた時、私の足下から伸びる黒いソレは嗤(わら)っていた。  私が生きている限り永遠に付きまとうソレは、ある意味私の半身。私のもう半分。片割れとも言える存在。そんな私の片割れが……まだ東の空に佇む太陽の強い光により、私よりも何倍も大きくなっている。そして、1番遠くにある、顔に位置するところ。本来なら統一された黒で塗られている筈のその部位に……逆さ三日月の口のようなモノと、真ん丸い2つの穴、目のような白の斑点が……くっきりと……  酷く吊り上がった口が動く。 「ねぇ、そろそろ私と代わってよ」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加