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序章
今より遠い、遥かな昔――
火の山に坐す苛烈なる業の女神が、龍の姿もつ美しき水神に恋をした。
しかし火と水とは相容れぬが、万象の理。
女神の悲嘆は時を経て激昂と化し、火の山は月が満ち欠ける一巡りの間、猛々しくも火を噴き続ける。
これを憂えた水神は、女神の怒りを鎮めるべく天より滂沱と雨を降らせた。
降り続く豪雨は大海となり、荒ぶる火の山をも呑み込む。
この時、怒れる女神の零した熱き涙より、地の底の民が生まれた。
彼の民は軈て、暗く狭き地の底に帝国を築き、自らを地帝人と称して権勢を振るうようになる。
祖の母たる、火の山の女神こと火紗瓊(カシャニ)を崇める心も、いつしか希薄なものとしながら――
青浪諸島 建国神話(壱)
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