あの階段を下りたなら

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**** トーストと珈琲。 テレビに映る左上の時間を気に掛ける朝食。 カップとお皿を流しに運ぶ。 「行ってきます」 お決まりの言葉と共にキッチンを出る。 「はい、いってらっしゃい」 母の、この言葉に背中を押され玄関を出る。 新聞を取りに出て来た隣のおばさんに、小さく頭を下げる。 「いってらっしゃい」 と、返される。 出汁の香が、台所の小窓からこぼれ出る住宅街を足早に抜ける。 何時もの朝。 何度繰り返した朝だろうか。
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