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改札をICカードで抜ける。
人の群れに逆らうように階段を下る。
ホームに停まる電車に駆け乗った。
私を待っていたかのように扉は閉まる。
都会から離れる地下鉄は、先程までのラッシュとは違う時間が流れるかの様に心を軽くする。
空いている席にも座らず、扉にもたれて立つ。
ガラス窓から外を眺める。
地下鉄の窓から見える風景は暗い。
パイプだけが交差する壁。
長い年月で煤けた黒い壁だけが目前に迫ってくる。
“次の駅で引き返そうか”
小さな葛藤を呑み込んだ。
閉まる扉を眺めて過ごす。
“この次の駅ならまだ間に合う”
又、閉まる扉を眺めてた。
窓に景色が現れた。
途中から地上を走る地下鉄は、埋立地へと向かう。
晴れ渡る空に広がる自由な雲を見つめ、潮風が見えた気がした。
“海に行こう”
そんなに綺麗では無い都会の海。
埋立地の暗い海。
それでも吹き渡るのは潮風で、のんびりと潮風を感じ海辺のベンチで海を眺めて過ごそう。
心は既に、海を渡る風に囚われる。
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