あの階段を下りたなら

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**** 「山科さん、昨日の議事録は出来てるかね」 森山部長の声に、一瞬ビクッと肩が動きそうになる。 「あっ、はい部長。 今、お持ちするところでした」 17階のオフィスの窓。 眺める青空から視線を戻し、昨日仕上げた書類をそつなく渡す。 「おぉ、 ありがとう。 急かして悪かったね。 本社に送らないといけないからね。 助かったよ」 部長のお決まりの言葉をお決まりの通りに並べ、お決まりの微笑みを返す。 「いえ、お持ちするのが遅くなり申し訳ありません」 既に背中を向ける部長に頭を下げ、ため息を吐きながら腰を下ろす。 「はぁ~、今日は短かったなぁ」 沈む心で書類を広げ、パソコンに向かう。
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