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もう嫌だ。もう無理だ。やってられない。
雨がやんで晴れてきたら、私はボンヤリしながら、足を引きずって庭を移動した。
こんな所、出てってやる。屋敷の外は、広くて大きな世界なんだ。どうせ死ぬなら、そこで死にたい。
セキュリティとか、厳しいかもしれない。でも、塀の隙間から外へ、私はすんなりと抜け出すことができた。
しばらく頑張って進んでたけど、だんだん疲れてきた。頭の中がもっとボンヤリしていく。
体の力が抜けて、私はそのまま地面に倒れた。
気が付いたとき目に入ったのは、広くて大きな空。鼻で感じるのは、乾いた風のにおい。
体はダルいけど、体は痛くなくて、頭が何だか暖かなものに包まれている気がした。頭を動かしてみると、白い毛が見える。
「気が付きましたか」
声が耳に入る。声のした方を見ると、私を見つめるヤギの顔。
「え!?ヤギ!?」
驚いて、私は跳び起きた。
「もう元気そうですね」
優しそうな声が軽く響く。
「え、今、誰?」
誰がしゃべったの?私は耳を澄ませる。風の音がゴーっと響く。辺りを見回しても、ヤギ以外しゃべりそうなものは何もない。
「誰もなにも、ここには僕しかいません」
優しそうな声がまた響く。私はヤギの目を見つめる。
「え、あなたが…?」
「ええ、僕が」
「あなた、話せるの?私の言葉もわかるの?」
彼は確かにこう答えた。
「ええ。僕は神に選ばれた者ですから」
か、神…?
私は何も返せず、あっけにとられた。
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