スケープゴート・エスケープ

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 私の主は、この広い屋敷を管理している立派な人間。何をしているのかよくわからない。周りのみんなは「素晴らしい」「立派だ」と褒めて、尊敬している。  でも、私にとっては、ただのエロおやじだ。  主は、美人や可愛いコに対してすぐに手が出る。尻、腹、背中をなでるのは当たり前、たまに鼻先にキスをしてきたり、腹や胸に顔を埋めてくる。普段は優しく、思いやりある言葉をかけるけど、時には子供のようにワガママで手荒になる。 「たまに乱暴なところはあるけれど、それも仕方がないわ。主は色々と抱えているものがあるのだから、ああいう形でしか発散できないのよ」  慣れているのか諦めているのか、私の仲間はそんなことを言う。  この前、私の仲間が、主に組み敷かれていた。私はいち早く止めに入った。でも、「そんなことしなくていいわよ」となぜか仲間に笑われた。  別の日、主は無理矢理、別の仲間の腹をなで回し、胸に顔を埋めていた。仲間は明らかに嫌がっている。そのときはさすがに駄目だと思って、私は止めるため主に飛びついた。すぐに払いのけられるけど、私は何度も主にしがみつく。 「やめて!お願いだからやめて!!」  でも、主がやめることはなくて、払いのけた私に向かって怒って言った。 「黙れ!この嫉妬深いメスが!!」  嫉妬…?あんたみたいなやつに嫉妬なんかしないし!!  ブチ切れた私は思わず、主の腕に飛びついてそのまま噛みついた。痛がる叫び声が私の耳にキーンと響いた。  それからのことはよく覚えてない。殴られ蹴られ、ムチでたたかれたかもしれない。そして雨が降る中、庭に投げ出され。  誰か来るかもしれないと思ったけど、雨が強いから、誰も来なかった。
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