第1章

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顔を洗い歯も磨いた。朝ごはんは食べない。 僕は家の扉を開いて外に出た。 「おはよう」 声がする方に首を振ると、隣の家に住んでいるハンスが屋根の上に浮いていた。どうやら掃除をしていたようだ。屋根の上に溜まったゴミを「深淵」に落としている。 ハンスには一人娘がいて、夫人と3人で暮らしている。娘はベルという名前でまだ幼い。 「おはようございます。ハンスさん」 僕は応えた。 「今日も仕事かい?休日なのに大変だなあ。」 「そういう仕事ですから。それでは。」 気さくなハンスの挨拶をおざなりにしてしまうことに少しの罪悪感を覚えつつ、僕は彼女の家に向かって空気を蹴った。
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