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彼女の住んでいる区域に近づく。
この辺りは、「床」がある。
僕らが住んでいるこの空中都市には基本的には「床」がない。
なぜなら、僕らには「羽」と呼ばれる器官があり、その器官のおかげで浮くことができるからだ。
寝ている時も「羽」は機能し、僕らが「深淵」に落ちてしまうことを防いでくれる。
だから僕らに「床」は必要ない。
しかし、生まれつき「羽」がついていない人たちがいる。
「羽なし」と呼ばれるその人たちは、浮くことができない。空気を蹴ることができない。
「機械羽」で浮いている「床」がなければ、「深淵」に落ちてしまう。
そういった「羽なし」のためにこの区域は「床」を設置しているのだ。
「機械羽」がもっと安価に製造できれば、町全体に「床」を張り巡らすことができるのだが、今のポリスの財政難を考えると実現は難しい。
彼女はこの区域に住んでいる。
住んでいるというよりは、閉じ込められていると言った方が良いのだろうか。
彼女は、「羽なし」だ。
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