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野島涼子は猫の群れと通りを十分程歩いて家に帰ると、部屋着に着替えて奥の和室の仏壇に線香を上げに行く。
広くはないが二階建ての木造の一軒家に今は涼子一人で住んでいる。大好きなおばあちゃんが死んで、もうひと月が過ぎようとしていた。
遺影を拝んで手を合わせてチーンと鐘を鳴らし、振り返ると猫たちは消えている。不思議だが、おばあちゃんの葬式が終わった翌日からオカルト現象が起きて、最初は二~三匹だったが、みるみる増えて今では数十匹の猫が集まった。
『幽霊猫屋敷になったきっかけは、葬式の夜の出来事からだ……』
追悼の意味でおばあちゃんが亡くなった区間を一人で電車に乗って、泣きながら手を合わせて目を開けると電車内に黒猫が一匹現れた。
『その猫は私が家に帰るまでついて来て、今みたいに仏壇で拝んでいると消えた』
涼子は台所に行って冷蔵庫から牛乳を出して飲むと、お皿にも入れて床に置く。するとコソコソと三毛猫が三匹、窓の外から台所の床に降り立ち、お皿の牛乳を飲み始めた。
「こっちは本物の猫なんだよねー」と微笑む。
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