第ニ楽章・猫のアルゴリズム

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 きっと生きた猫には幽霊猫が視えて、居る時には寄り付かない。以前はもっと沢山の野良猫が集まっていたので別の意味で猫屋敷だったが……。 『同類でも幽霊は怖いのか?』  そして涼子はリュックを持ってレコーディング室へ入った。三畳の空き部屋にフィールドレコーディングの仕事をしていた父の機材を並べてある。  旧式マイクに大型スピーカー。マルチレコーダーにアナログミキサー。Mac Classicにローランドの音源。  シンセサイザーは自分の趣味で、ネットオークションで買ったハンディレコーダーと父のパラボラ集音マイクを持って地下鉄に乗るのが夕暮れの日課になっている。  今回録音した音源データをパソコンにコピーし、ヘッドホンをして聴き直す。最初は電車のガタゴトとした騒音で聴き取り辛かったが、猫の鳴き声に共鳴して、微かな声音が遠くから流れてくる。  涼子はそれを聴いて今日のレコーディングはいい感じだと喜んだ。
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