第ニ楽章・猫のアルゴリズム

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『猫は気まぐれな生き物だけど、長く付き合うと分かり合える。猫には猫のリズムがあるんだよ』  これはおばあちゃんが口癖みたいに言ってたセリフである。 『気分で行動しているように見えても、ちゃんとした法則があるんだ。こっちが感じてあげれば、猫はちゃんと返してくれるからね』  涼子は最初に現れた黒猫からも教わった。おばあちゃんが猫と散歩していた公園を一人で歩いていると、黒猫が現れて後ろからついて来て、振り返って消えたと思ったら、駅の付近で電車を眺めていたりする。 『猫の亡霊は死んだおばあちゃんと繋がっている。ある時間帯に電車に乗ってあの区間に来ると、決まって猫は鳴き声を上げた』  そして猫はどんどん増えてコーラス隊のハーモニーみたいに声を合わせ、改札を通る順番は決まっているし、戯れる時も気ままな規則性がある。 『フィーリングとリズム。音楽と同じだ』  涼子は電車のガタゴトした騒音をリズム音に加工し、猫の鳴き声を鮮明なコーラスとして取り出した。  一回の録音が五秒~八秒。もう二十回はレコーディングに行ったので、つなぎ合わせると120秒くらいの長さになっている。
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