第三楽章・猫のメッセージ

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 涼子は地下鉄でのレコーディングを霊録(レイロク)と呼び、NOを付けて最初は日付順につなげて聴いていたが、バラバラの効果音でしかなく、試行錯誤を繰り返して小節の最後の音程に合った順に並べてみた。  そして最終的に曲調を想像し、パズルのようにレイロクを組み合わせてみると、不思議なことに一曲の猫のミュージックに聴こえないでもない。 『今夜のレイロクはサビの重要な部分にハマる』  涼子はそんな予感がして、編集は明日のお楽しみとして、今日は色々あって疲れたのでシャワーを浴びて寝ることにした。  二階の南向きの部屋が涼子の寝室で、母は幼い頃に病気で他界し、父は六年前の東北地方の震災で亡くなり、おばあちゃんと二人暮らしだったこの家にいつまで住めるか分からないが、出て行く前にこの曲を完成させる決意だ。 『しかし、なんで今夜電車に乗り合わせた男の子に猫が見えたんだろう?』  もし猫の鳴き声も聴こえるとしたら、何か関連しているのではないかと涼子は思った。元々、霊能力があるタイプではなく、あの夜から不思議な現象が自分の周辺に巻き起こっているに過ぎない。 『出会いにも意味があるのかもしれないが、変に干渉されて邪魔されるのなら、絶対に許さないからね』
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