第三楽章・猫のメッセージ

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「うそ?」と涼子は驚き、顔を寄せて画面を覗き見る。友太は緊張気味にスワイプして数枚の写真を映し出し、黒猫も近寄って視線を向けた。  青い空に向けられたパラボラ集音マイク。  海の沖合から港に帰って来る漁船。  海岸に飛びかうカモメの群れ。  長靴と作業着の漁港で働く人々。  その港の堤防にフィールドレコーディングをする男の姿がある。 「父を知ってるの?」 「オレ、南三陸町の生まれだから。震災で家族全員亡くして、こっちの親戚に引き取られたんだ」  友太にそう言われて、涼子は更に驚いたが、到着場所が迫りレコーディングの準備をしなければならない。 「分かった。後で話そう。そろそろレイロクの時間だから」 「レイロク?」  涼子は友太の問いに微笑み、写真に写っていたパラボラ集音マイクをリュックから出し、「父の形見」と言って微笑む。
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