第四楽章・希望

2/4
前へ
/32ページ
次へ
 涼子と友太は猫の群れを引き連れて地下鉄の駅を出ると、三ツ沢上町の公園前にあるマクドナルドに入り、テラス席に座って電車の中で見た幻想的なシーンを話し合った。 「父が海に流されるのを見たよ……。きっと、港でフィールドレコーディングをする父の写真を見たからだね」  猫たちは周辺に集まってポテトとナゲットとドリンクを白いテーブルの上に置く二人を見守り、涼子はまだ少し涙目で、電車の最後尾の車両の床に座って目を閉じ、ヘッドホンから聴こえる波の音に耳を澄ますシーンを思い起こす。 「フラッシュバックみたいに、父が学校の子供たちの歌や港の人達の話しにマイクを向け、和やかに笑ってた」 「オレには津波しか見えなかった。たぶん、心の中にあるイメージが蘇ったんだろうな」 「もしかして」  涼子はふとテラス席の周辺で戯れる猫たちに視線を向けて、この子たちの死を想像した。黒猫は三毛猫とテーブルの下に居たが、涼子の想いを感じて隣の席に飛び上がってちょこんと座る。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加