第四楽章・希望

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「君たちもあの場所で亡くなったの?」 「うん。オレもそう思った。この猫たちはあの震災の津波で亡くなった亡霊なんだ」 「おばあちゃんが呼んだんだね。お父さん亡くなってから、おばあちゃんおかしくなったから」 「認知症だっけ?」 「うん。猫と散歩して、鳴き声に合わせて歌ったりしてた。猫を私と間違えて、話したりするんだよ」  それを思い出したのか、涼子は涙目で笑って祖母と過ごした楽し日々を懐かしむ。  友太はあの悲惨な光景を思い出し、暗闇の中へ落ち込みそうだったが、涼子の笑顔を見て水の底から心が浮き上がった。 『涼子は猫みたいに可愛い』  広角を上げて鼻をツンとさせ、少し照れた感じの微笑みが悲しい心を救う。
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