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しかし少女はタクシーを降りて走って来た友太を目の前にして、「秘密だからね。誰にも言うんじゃねーぞ」と小声で恫喝し、顔をそむけて通過した。
猫たちも『ぷいっ』と友太を無視して歩いて行く。
「ちょっと……」と友太は勇気を振り絞って声をかけたが、少女も猫も振り返る事なく遠ざかって行く。
「なんで?」
友太は愕然としてその場に立ち尽くし、『久しぶりに頑張ったのに、結局これか?』と頭を抱えた。
しかし、その呆然とする友太にさっきの駅員が近寄って声を掛け、友太を少女の彼氏と勘違いして過去の悲しい出来事を打ち明ける。
「仲直りして、優しくしてあげてよ。あれからずっと落ち込んでるのさ」
「えっ、どういうことすか?」
「なんだ。知らないのか?」
「はい。最近知り合ったばかりで」
『というか、ついさっき出会ったのだが……』
「母代わりのおばあちゃんが電車事故で亡くなったんだ。認知症で夜中に地下鉄の線路内に迷い込んではねられた」
「分かりました。今度会ったら、絶対に仲直りします」
友太はそうお礼を言って、急いで改札を通ってホームへ駆け下り、グッドタイミングで到着した電車に飛び乗り、少女が録音していたあの区間へ再び向かう。
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