第ニ楽章・猫のアルゴリズム

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『あそこでおばあちゃんが亡くなったのか?』  その死と猫が関連していると友太は想像し、少女は猫の亡霊と亡くなった者を弔っていると推理した。  少女が録音を始めた付近に電車が迫ると、車両の最後尾に立って車窓を眺めながら暗闇に耳を澄ます。しかし特別な音が聴こえてくる事もなく、ガタゴトという騒音だけが心に響く。 『猫のいるタイミングで何かが聴こえるのか?でも、なんで猫が見えたんだ?』  友太は座席や床、網棚にまで乗って自由に戯れていた猫を思い返し、床に座り込んでイヤホンをして70年代にヒットしたポップスに耳を傾けた。  すると過去から未来へ、自分には無縁だった希望の光が見えた気がする。 『きっとまたあの子に逢える。少女と猫たちはまた此処に来て何かを聴くはずだ』  そして友太は家に帰ると部屋にこもってパソコンで地下鉄ブルーラインでの電車事故を調べ、亡くなった祖母を悲しむ少女の名前を知った。  地下鉄のホームで泣いている少女の写真がSNSに拡散し、『可愛い』とか『可哀想』とか無神経なコメントがあり、少女がキャップとマスクをして周囲を警戒していたのを理解した。
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