第三楽章・猫のメッセージ

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 涼子は最後尾の車両の壁を背にして床に座り、ヘッドホンをしてマイクを立てPCMレコーダーに接続した。猫たちもそれに備えて網棚や座席から降りて、涼子の近くに集まって耳を澄ましている。  友太も涼子の隣に座ると、涼子は友太のイヤホンをレコーダーに接続し、胸に手を当てて目を閉じたので、友太も願いを込めてゆっくりと目を閉じた。  そして突然ガタゴトと揺れが激しくなり、猫たちが耳を立てて同じ方向を向き、一斉に鳴き声を上げると遥か遠くの方から歌声が流れてくる。  その時、何かが押し寄せる感じがして、友太が焦って目を開けると、目前に水飛沫が上がり、暗闇のトンネルの奥から大量の水が押し寄せ、電車が波に呑み込まれて車内にも水が溢れたが、一瞬にして故郷の海の風景に変わり、友太は津波に襲われた町を思い起こす。   『あの日、消えてしまったモノとつながっているのか?』  友太はそれに気づいて現実に戻り、茫然として涼子を見ると、彼女は車内の床にへたり込み、ヘッドホンをしたまま頬に涙を流していた。
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