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中込修二
俺の本当の故郷は東京。
だが父親が田舎暮らしがしたいと言い出して小学生の時に田舎に引っ越しをさせられた。
ガキの癖にマンションから見える夜景が好きだった俺はビル1つすらないこの田舎を心の中で毛嫌いしていた。
そして隣のやけに古い家に住んでいる野暮ったい女、弥生が馴れ馴れしくしてくるのも気に食わなかった。
いつもいつも五月蠅い。
クラスでは静かな癖に俺の前だと野良犬みたいにギャンギャン五月蠅い。
なんとなくだが好意があるのはわかった。
それは中学生になっても続いた。
東京に早く帰りたかった俺は主導権を持つ父になりたくもない弁護士になるだのうそぶいて都立への進学許可をもらった。
それからは必死になって勉強し、見事進学。
田舎出身だと担任が言いふらしたため、クラスメイトに舐められないように首位の座をキープしていた。
だがそれからしばらくして…なんて名前だったかは忘れたけどクラスの嫌われ者に首位の座を奪われた。
調子に乗られると困るから、少しいじってみたらすぐに通信制に切り替えて学校に来なくなったんだった。
とりあえず、そんなこともあったな。
それから学校1かわいい小春と付き合えてしばらく幸せだったんだけど、この女は自分が可愛いとわかっているから結構わがまま。
欲しいものを買い与えたら俺の地元に行きたいってすぐ言いだした。
とりあえずクラスで何か言われるのも嫌だったから連れ出したら、地元で弥生に会っちゃったんだよね。
小春は帰りの電車の中から「モデルみたいに高飛車そうで怖そうな人だね!」とメールをよこしてきたが、僻み丸見えでだらしない女だ。
実際、弥生は結構いい女になってたから即乗り換えた。
小春も通信に変えて学校に来なくなったから俺は気楽だった。
それから高校を卒業してからも弥生とは付き合い続けていて結婚の話も出ている。
大学に通いながら結構充実している。
充実しているからやっぱり女もよって来る。
つい昨日、小春からメールが来たのだ。
夕方に「これから会えない?」だとさ。
これはワンナイトできる。
俺は返信するや否や部屋を出た。
「世の中は本当にちょろいな。」
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