女と男

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女と男

「こんにちは。」 知らない男が私に話しかけてきた。 「…こ、こんにちは。」 驚いた。 この男の服装、全身が白で覆われている。 式典の帰りなのだろうか。何だコイツ。 そしてあろうことか、隣に座ってくる始末。 なんて馴れ馴れしい男か。 「おや? 君は面白いコーディネイトをするんだねえ、全身赤じゃないか!」 おまけに馬鹿なようだ。 「うふふ。好きなんです、赤色が。」 「ほぉ! どうしてだね?」 「どうしてって…まあ、友達に褒められたからですかね。『君は赤が似合うよ』って。」 その時、私の携帯が鳴った。 携帯を開くとメールが1件あり、開こうとすると男が見るのではないかと思い、いつもより少し高めの位置で携帯を見つめる。 「そうか。僕も彼と同意見だな。」 「何がですか?」 「なに、僕も君には赤が似合うと思ったのさ。」 「はあ、どうも。よく私の友達が男性だってわかりましたね…?」 「え? あぁ、男だったの?」 「ええ! もしかして、当てずっぽうでした?」 「まあね。でも男にそれだけのことを言わせたなら君は彼に好かれているんだろうな。独身の僕からすると羨ましい限りだ。」 男はガクリと肩を落とし、深いため息をつく。 あまりにも沈んでいる様なのでもしかしてこの男、私を狙っていたのだろうか。 電車内には誰もいない、そして隣には女。私なら間違いなくチャンスだと確信する。 「実は、その方と最近付き合い始めたんですよね。あ! ごめんなさい。惚気話なんて興味ないですよね。」 「いやいや、ぜひ聞かせてほしいね。」 そうして私はこの男にべらべらと惚気話を話してしまったのだった。
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