俺、元営業職。今射的の景品

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射的台には無数の景品が飾られていた。その中でも意識がはっきりとしているのは極数名とみられる。いきなり自分が射的の景品となって混乱しているのであろう。話には混ざって来ない置物もある。あるいは白い生物同様に昇天した可能性もあるが水筒には分からなかった。 「あたいの言葉を信じなよ。あんたたちが結ばれようとする限りこの世界は死滅するんだ。つまり、あんたたちが結ばれることは無いんだよ。あたいは死ぬ気は更々ないね。きっぱり別れな。それでみんな救われる」 アヒルの惑わせるような口調にネズミが哄笑した。 「堕天の女神に耳を貸す必要はないね」 「自棄に自信があるじゃないか。あたいの伝説が間違っているとでも言いたいのかい?」 「結ばれてはいけない男女の真実はこうだ。結ばれれば、救世主が生まれるんだよ。それは時の権力者にとって、自分の時代を終わらせる者。既存の世界が滅びることは、新しい世界が生まれること。ワタシが知ってる伝説さ」 ネズミが口調を変えた。誰も知らない伝説であった。 「それって、この状況を打破できるということですよね?」 ランチボックスは期待している様子だった。アヒルの反論に耳を貸す気は無いようだった。
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