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「ふん。でもまあ部下を取り戻すって言うならあたいも力を貸そうじゃないか」
アヒルがぶっきらぼうに告げる。
「ありがとう、考えるなら多い方がいいよね」
ランチボックスは嬉しそうだった。
「どういう風の吹き回しでしょうねえ」
ぼやいたネズミの声をアヒルは無視する。
水筒も考えているのであるが光は見えてこない。大体、魂と魂が結ばれるということは、そのあとどうなるんだという位置で思考が止まってしまったのだ。水筒としては彼女の願いを叶える手伝いをと思っても、前世のことが渦巻いて先に進むことを塞き止められていた。
それに人質と魂を入れた魂袋は絶無が管理している。人間は魂銃で撃たれると肉体と魂、記憶、感情、思考、欲求に分離される。魂は魂袋に吸い込まれ、記憶、感情、思考は物質に閉じ込められるのだ。残った肉体を回収をする仕事は絶無の信仰者が中心となる。欲求に関しては絶無に吸われていくらしく、時間が経つにつれて物質になっていくのだと言われている。
その本拠地となる不夜城は彼らの居る射的台からも見ることができる。巨大な要塞だ。無気味な赤い旗が屋根の天辺に靡いている。信仰者のみが崇拝堂に入ることができ、要塞の中がどうなっているかは信仰者だけが知る。絶無に反発し、早々に置物となってしまった彼らには知ることができなかった。
時計台が北と南に見えていたが今はどちらも機能していない。北に関しては信仰者と人間との紛争で瓦礫となっている。南は絶無が出現したときに要塞の一部として取り込まれてしまった。その絶無がどこから来たのかも謎のままに笛の音が調子を取る太鼓に合わせて響き渡る。
射的台の彼らは悶々と方法を考えたがいい方法は見当たらなかった。時間だけが刻々と過ぎて行く。
2章
尾長鳥がけたたましく早朝を告げて二日目となり、状況は変わり始めた。空模様も何やら怪しい。見えていた太陽は黒雲の中に吸い込まれ、提灯に光が灯る。風景は夜だった。不夜の星祭に仮初めの夜が来る。
「八尋さんは何に転生したかったんですか?」
「芸の道を極めた神様になりたかったのよねえ。転生話を信じて部隊をぬけて絶無の信仰者になったけれど信仰なんて柄じゃなくてね。今はネズミだわ。マキナちゃんはどうしてこんなことに?」
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