矛盾

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 聖堂の水晶と赤い水晶の間に、生贄を捧げる大司教たち。  何も知らされず、復活させた召喚儀式の試しとして使われたノエル。  そうして召喚された、力の弱い勇者。  庭のテーブルで、グラスを揺らしリオを見つめる。 「馬鹿みたいだな」 「クリス」 「だけど朗報もあった。召喚儀式に必要な二個の、対になっている水晶。聖水晶と赤水晶はもう、あれしかないらしい」  失われた召喚儀式。  それは正確には、失われた対の水晶だったんだ。  片割れの、聖水晶でも赤水晶でも、どちらか一方が壊れればもう使えない。  そういえばジルが、城の宝物庫に大きな水晶が一個あるって、国王が言っていたと昔教えてくれたっけ。  もしかしたら、それは片割れの水晶なのかもしれないな。 「手っ取り早いのは水晶を壊すことだ。そうすればあのクソみたいな儀式はもうできない。これ以上生贄も必要なくなる」 「やるのか?」 「いや、まだだ」  まだ、勇者が生きている。 「いい感じなんだ。もうすぐ、ノエルがやってくれると思う」 「自分でやらないんだ?」 「やらないよ」  勇者同士の戦いは、被害が大きくなる可能性が高い。  弱くても勇者だ。  魔力が想いの強さに影響され、彼女がノエルを守るためにどんな覚醒を起こすかわからない。     
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