矛盾

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矛盾

0    地下の研究室の壁をマジックミラーで固定した。  当然魔法で、魔力消費が激しいから、節約のために起動は水晶を使うことにした。  地下には水晶を五つ設置し、増幅も促す。中央へ設置した水晶へ魔力を流せば、半日はマジックミラーの向こうが見える。  壁に移っている水底の召喚魔方陣を書き写し、天井から落ちてくる滴は、誰もいないときに転移して採取した。  滴の方は、赤い水とは違い凝縮されすぎていて、半固体化して魔力を大量に内包していた。その成分が、血液としか思えなくて吐いてしまった。  あの水を真っ赤にする量の血液。  凝縮された一滴に、どれだけの生贄が必要だったのか。  それは死体から? それとも生きたまま?  その犠牲の滴が注がれた水の中を通り、その滴の力を取り込み、この世界へ適応して、勇者が現れる。  世界が違うのに、生きていられる理由がこれなのだろうか。あのチートの理由が、これなのだろうか。  おかげで最弱メンタル虫が、悲鳴のような泣き声をあげて起き出してしまった。  それを宥め、押し込め、誤魔化している。  聖教会の書庫をあさり、禁書庫をあさり、当たりをつけていく。     
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