矛盾

2/7
1160人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
 その予想が正解かを確認し、その非道さに言葉も出ない。  ノエルのところへも顔を出した。  指輪を渡し、少し目の下に疲れを滲ませているノエルを励ましつつ、永遠なんてないんだと囁いた。  ずっとなんてない。いつか人は死ぬし、突然消えてもそれは死と同じだと。  本当に愛していて、本当に愛されていて、だけどそこに神の意志が介入したというのなら、それは果たして、本物と言えるのか、と。  神に言われ、愛していると思い込んでいるのではないか。彼女は違う世界の人種で、お前とは違う。  願ったというが、それは本当に叶っているのか。  ノエルは俺の大好きな水色の瞳から涙を落とし、どうすれば、と嘆いた。  だから俺は、悪意も何もなく、理不尽な暴力に加担した、無垢なノエルに囁く。  愛する者の命を奪い、そうして一緒に、逝けばいいと。  そうすれば、そこで彼女がそれを受け入れるのならば、その愛はきっと……本物だ、と。  大司教はノエルを入れて、五人しかいなかった。  ノエルはあの容姿で大司教となったようで、行事などで国民の前に立つ、いわゆる客寄せだ。  禁書庫や各大司教の私室をあさり、召喚儀式の経緯を記すものも調べつくした。  聖堂にある水晶へ魔力を注ぐ神官たち。     
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!