矛盾

4/7
1160人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
 そんな危険なことを、なぜ俺がしないといけないんだ。  この世界の住人がしたことだ。この世界の住人で決着をつければいい。  きっと彼女は、神の餌となるだろう。元の世界でも神官騎士をしていたなら、きっと喜んで……魂を差し出すだろう。  リオが俺のグラスを掴む手に、手を重ねてきた。 「クリス、愛している」  真摯な眼差しを俺に向け、想いを言葉に乗せて贈るリオに微笑む。 「俺も、リオを愛している」  だけどリオ、最弱メンタル虫が起きている。  ふざけんなと。俺たちはお前らの玩具じゃないと。やめてくれと。これ以上苦しめないでくれと。  意味もなく、そこにある機械を戯れに動かし、関係ない者を浚い、使い、食いつくす。  このクソみたいな世界(かみ)が憎いと。そして、助けてくれと泣いている。 「リオ、これが終わったら、しばらく一緒にいてくれ。俺の横で、俺の手を握っててくれ」  でないとまた、逃げ出しそうなんだ。 「うん。手を繋いで、離さない。クリスの手を離さない」 「……愛してる」 「俺も愛してる」  召喚魔方陣は、難解すぎて分解するのも難しい。  それでも俺は、解読にせいを出す。  大規模魔方陣すら、完全に解読できなかったのに。何を探し、何を求めているのか。     
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!