朝の通勤で

3/3
前へ
/3ページ
次へ
温かい高いコーヒーを飲んでも寒さは堪えるしかない。オーバーを買い、雪祭りを見ようか迷ったが、また仕方なく地下鉄に乗った。周りの視線が気になるので眼を閉じた。そしてまた眠気が襲って来た。気付いたら蹴上駅に着いていた。ここって南禅寺あるところだわ。寒くはないけど、湯豆腐食べたくなってしまった。春、秋ではないから比較的入りやすかった。長い夢を見ているうちにランチ時になってしまっていた。湯豆腐と天麩羅で空腹が満たされた。庭に白鷺がやってきて、「私はサギ。」と言った。なんで鳥が喋るのか、「あんたは詐欺よ。」と言ったら周りのお客が笑っていた。何故か南禅寺にお参りするのを忘れて地下鉄駅へと向かい、何しに来たのかと思いながらも夢だからまた地下鉄に乗るんだと思ってしまった。紅葉シーズンにお参りすれば良いのだと納得させながら、これでニューヨークに行けたらお値打ちかもなんて希望を念じてしまった。そして座りまた眼を閉じた。いつになったら悪夢ではないが、夢から覚めるのか眠ってしまうから悪いのか分からないが、これではいつになったら出勤できるのか、しかし、好きな街を訪れることは楽しい。夢なら覚めないでほしい。地下鉄定期で海外旅行もできたのだから。それに苦手な飛行機に乗らずにイキナリ地下鉄だった。 ハッと気付いたら西新宿のカフェにいた。今はもう夢の中ではなさそうだ。モーニングを食べながら居眠りをしてしまっていた。会社は遅刻。しかし、トースト食べただけなのに湯豆腐や天麩羅まで食べた気になってしまい思わず笑ってしまった。遅刻の言い訳考えなくてはいけないと焦っていたらカフェのマスターに「土曜出勤ご苦労様。」と言われ、天然杏果は休日だったことを初めて知り、おバカな自分を苦笑するしかなかったが、遅刻じゃなくてホッとして、あちこち旅できて得した気分に浸りながら短時間の旅行にドーっと疲れが出て日帰りスパにでも出掛けようかと、とにかく笑いが止まらなくて、一人ニタニタ笑いながら歩き始めた土曜の朝のひと時だった。太陽が眩しかった。 ニューヨーク行ってみたかったのにと思いながら、「土曜日だったのか。」と呟いた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加