揺れ動くブランコ

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彼は急いでリモコンでテレビ画面を消して玄関のドアを開けた。普通ドラマならこういう場合、パトカーや人集りで騒がしくなりそうなのに公園の前は物静かである。ましてや、それどころか死体や警察など何もない。いや、違う。そこには一人だけ静かにブランコに乗る女性がいた。白いハイヒールを履き、赤いドレスを着て黒い髪を下ろしている。 「久しぶりね?お兄ちゃん」 その声に聞き覚えがあった。彼はなんとなく彼女の横に座った。ブランコの板に。 「君はあの時の……でも子どもじゃなかったっけ?」 「人を見た目で決めちゃいけないよ。だって私……あなたより年上なんだから。約束覚えてる?」 「友だち百人?」 すると体動き出す。ブランコが揺れているのだ。 「そう。お陰様で十匹のカラスや三匹の猫も友達になったわ」 ブランコの前で立ち並ぶ十匹のカラスと三匹の猫。 「あなたと下にいるアリやミミズたちも」 ここからでは目に見えない。 「そして彼らが来たわ」 空を見上げる目は白の方が多く、口は開ぱなしになっていた。そしてそこにいた大人も子どもも血の気がなかった。少なくとも二十人はいるだろう。 「今、友だち九十九人なの。友だちはみんな同じで数えてあげないとね。そしてお兄さん、今度はあなたが私の友達になる番よ」 急に背中に何かが当たる。彼は誰かの両手の感触がした。彼の体が前方向に宙に浮く。 その先に彼女がスコップを持っていた。彼女は鉄の部分を彼に当てる。そして彼は血を流して死んだ。 私は親友である彼に相談されていたから彼女のことを知っていた。     
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