2人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は急いでリモコンでテレビ画面を消して玄関のドアを開けた。普通ドラマならこういう場合、パトカーや人集りで騒がしくなりそうなのに公園の前は物静かである。ましてや、それどころか死体や警察など何もない。いや、違う。そこには一人だけ静かにブランコに乗る女性がいた。白いハイヒールを履き、赤いドレスを着て黒い髪を下ろしている。
「久しぶりね?お兄ちゃん」
その声に聞き覚えがあった。彼はなんとなく彼女の横に座った。ブランコの板に。
「君はあの時の……でも子どもじゃなかったっけ?」
「人を見た目で決めちゃいけないよ。だって私……あなたより年上なんだから。約束覚えてる?」
「友だち百人?」
すると体動き出す。ブランコが揺れているのだ。
「そう。お陰様で十匹のカラスや三匹の猫も友達になったわ」
ブランコの前で立ち並ぶ十匹のカラスと三匹の猫。
「あなたと下にいるアリやミミズたちも」
ここからでは目に見えない。
「そして彼らが来たわ」
空を見上げる目は白の方が多く、口は開ぱなしになっていた。そしてそこにいた大人も子どもも血の気がなかった。少なくとも二十人はいるだろう。
「今、友だち九十九人なの。友だちはみんな同じで数えてあげないとね。そしてお兄さん、今度はあなたが私の友達になる番よ」
急に背中に何かが当たる。彼は誰かの両手の感触がした。彼の体が前方向に宙に浮く。
その先に彼女がスコップを持っていた。彼女は鉄の部分を彼に当てる。そして彼は血を流して死んだ。
私は親友である彼に相談されていたから彼女のことを知っていた。
最初のコメントを投稿しよう!