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姫乃亜弥は、その推理小説のちょうど半分にあたるページにしおりを挟み、深いため息とともに本を閉じた。
「また、だわ……」
亜弥はパソコンの電源を入れると、SNSに書き込みを始めた。
<黒川ヤヨイの新作『透明人間の殺人』を読みました。幼稚な殺人トリックにがっかり。半分まで読めば、犯人もその後のストーリーも予想できる。読む価値なし>
亜弥の書いた辛辣な文章は、あっという間に拡散されていく。亜弥のフォロワーたちは、いつも彼女の「感想」を楽しみにしているのだ。
ほとんどが厳しいものだったが、その内容は的確で、フォロワーの中には亜弥の感想を参考に本を選ぶ者も少なくなかった。フォロワーの数はどんどん増え続け、今では亜弥の感想によってその本の売り上げが左右されるという、社会的な影響力さえ生まれつつあった。
そんな亜弥に雑誌の取材依頼が舞い込み、本を持った容姿端麗な彼女の姿がメディアに取り上げられると、男性ファンが一気に増えた。
亜弥のファンたちは「姫ジャンキー」と呼ばれ、彼らは亜弥の感想に同調し、彼女がダメ出しした作品や作家に対する攻撃的な言葉をネットで発信し続けた。
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