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小さなころから亜弥の読書センスは群を抜いていて、彼女の書いた感想文には大人も舌を巻くほどだった。
大人になった亜弥は推理小説を好んで読んだが、その抜群なセンスからトリックや犯人がすぐにわかってしまう。よほどの書き手でない限り、彼女が良い感想を書くことはなかったし、それ以前にその作品を半分以上読むことすらなかった。
だから、亜弥の本棚に並ぶたくさんの小説のほとんどは、半分にあたるページにしおりが挟まれたままになっている。
最近、亜弥がよく読んでいるのは、「新進気鋭の女性推理作家」という触れ込みで人気を博している黒川ヤヨイの作品だった。彼女の作品はどれもベストセラーになり、ドラマ化や映画化された。
だが、亜弥は世間の評判ほど、黒川ヤヨイの作品を評価していなかった。殺人のトリックや犯人の動機づけ、伏線の回収方法などすべてに甘さを感じるのだ。
それでも彼女の作品を読み続けているのは、黒川のデビュー作が素晴らしかったからに他ならない。亜弥はしおりを挟むことすらなく、一気に読み終えてしまった。そんな作品は、これまでに数えるほどしかなかった。
そのときの亜弥は、まだ無名だった彼女の作品を称賛する感想をSNSに書いた。その後、黒川ヤヨイは一躍人気作家となったのだ。
一度は自分が認めた作家なのだから、また素晴らしい作品を書いてほしい……、そう思うからこそ、よけいに黒川ヤヨイの作品に関しては厳しい採点を下してしまうのかもしれない。
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