02 もう一つの世界

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 「あっついよー・・・、喉乾いたよー」  裕子はぐったりと道路際のガードレールにもたれ掛かっている。    自分達が辿り着いたのは10日後の未来ではないという事実が判明した。地下鉄の1番線に乗って来なければならないところを、誤って2番線に乗ってしまったのだ。  そしてここは、ただ今夏真っ盛りのご様子。ビルの電光掲示板には32℃という表示が出ている。    「あ、そうだ裕子、コンビニ行こうよ。飲み物、電子マネーで買えるかもしんないよ」  どうやらここはそれほど元の時間と変わらないように見える。  もしかしたら自分達が乗ったのは未来行、ではなくて、過去行だったのかもしれない。つまり10日前の世界だと、自分は思っている。  しかし、そんな自分の予想は大きく外れた。  「真由、ここってこんなに道幅狭かったっけ」  ぽつり、と裕子が疑問を漏らした。  「う、うん?そうかな・・・」  そう誤魔化したが、実は自分も気付いていることがあった。    ―お好み焼き屋さんが無い・・・  先ほど通った所に、お好み焼きや焼きそばを売る店があって、いつも通るときソースの良い香りがしていた。その店が無くなっている。  そして、自分達は目的のコンビニエンスストアに辿り着けなかった。何故だ?  結局、大分歩いてから偶然通りかかったコンビニで、ジュースとお菓子を買い、  そして、  今がいつであるか、それはいとも簡単に判明した。  店に入ってすぐ左、雑誌コーナーに行く手前に、新聞は並べられている。  その一つに目を落とす。  紙面の上部の日付を見て、自分は卒倒しそうになった。  「2005ねん!?」  自分より先に裕子が叫んでいた。    そう。そこには、今日という日が、自分たちがやって来た2015年より10年も前の、2005年7月18日であることが示されている。          
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