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顔を真っ赤にして怒る部長と、困り果てた顔の課長に申し訳なく思いながら、僕は二人に謝罪した。
僕が指導係だったのである。
部長に応接室に残るように言われ、僕は下座のソファに腰掛けた。そういえば、新人と新人母は上座に座っていたな、と今更ながら思った。
部長「今回の件は気にしなくていい。あのテのタイプは組織では働けないよ」
僕「大変申し訳ありませんでした」
部長「最近、新人がすぐに辞めるな。君はどうしてだと思う」
僕「率直に、私の指導力不足です。自分の業務に時間をとられて、あまり指導できないこともありました」
部長「彼はほったらかしにされたと思ったのかな」
僕「そう思います」
部長「しかし、残業は拒否するし、自分から聞くこともないのだろう?」
僕「まぁ、そうですが…」
部長「それじゃあ、親鳥からのエサを口を開けて待っている雛鳥と何ら変わりないじゃないか」
僕「…。」
僕「会社は、どこまで社員に対して責任を持つべきでしょうか」
部長「教育に関して、社員を成長させる責任はある。会社を社会の公器だと考えるなら尚更そうだ。しかし、成長の見込みがない社員を置いておくことはできない。それは全体にとって、マイナスになるだろう」
僕「彼に見込みはなかったのでしょうか」
部長「ないね。全くない。戦わずに白旗をあげるなんて、私たちの世代からは考えられんよ。しかも母親からいまだに独立もしてないだなんて。最近の学生はあんなにも酷いのかと思う」
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