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何故だろう。
その鋭い瞳に見つめられると、吸い込まれそうになる。
「わ……、私は……っ」
目が、離せない。
「あ……あなたの家には……住まないです……」
住めるわけがない。
この人が、私に手を出すとは思っていない。
そんな自意識過剰なことは、思えない。
ただ普通に考えて、よく知らない男性と一緒に住むなんて、あり得ないことだから。
それに何より、怖い。
私は柊ちゃんとなっちゃんのことしか信用していない。
他の人は、信用出来ない。
優しい人が、突然変貌して暴力を振るうことだってある。
「望愛が断るのは当たり前!瀬名くんの家に住むことも、一人暮らしもしません!そういうことだから、瀬名くん。これ以上、おかしなことは言わないように。出入り禁止にするよ」
「それは困りますね」
瀬名さんは、穏やかに笑いながら食事を再開させた。
そのとき、お店の電話が鳴った。
柊ちゃんが電話に出る。
どうやら電話の相手は、常連客のようだ。
私は厨房に戻ろうと、扉に手をかけた。
すると、背後から彼の声が聞こえた。
「君は、本当に今のままでいいの?」
背中に、言葉が刺さった気がした。
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