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はらはらと舞い散る銀杏の下で、屋台が焼き芋の甘い香りを漂わせていた。
改札から出た足を、一度は止めかけたが、思い直して歩き出す。かわりに途中のスーパーに立ち寄って、味噌を買っていった。
アパートの下でポストをのぞくが中身は空だった。
階段を上がる途中、醤油の焼ける香ばしい匂いが胃をくすぐる。匂いは部屋の換気扇から漂っていた。
鍵を取り出してドアを開ける。
「おかえりなさい」
狭いキッチンから彼女が振り向いて迎えてくれた。
「ただいま」と、買い物袋を手渡す。
「ありがとう、ちょうど切らしちゃって」
袋を受け取りながら、彼女がくすりと笑う。手を伸ばして髪に触れる。
「素敵な髪飾り。誰にもらったの」
と、指につまんだ銀杏の葉を見せてくる。
そういえばスーパーのレジでも同じような笑いを含んだ視線を向けられていたのを思い出した。
「銀杏並木の妖精さんに」
「へえ、妬ける」
あっさりと流された。
栞でも作ろう、と銀杏の葉をエプロンのポケットにしまって、彼女はキッチンに戻る。
「もうすぐ食べられるから、早く着替えちゃって。うがいと手洗いもちゃんとね」
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