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 夕日が地平に没していく。辺りは急速に暗くなってきた。  展望台から駐車場まで続く木道は木々に覆われていて足元が悪い。やや遅きに失した感はあるが、早いところ車に戻ることにした。  いい加減棒のようになった足を突き動かして、藪の細道を下り始めた。  木々に覆われた細道は思ったよりも暗かった。  陽の高いうちはああも清々しく見えたものが、今では大変薄気味悪い。  うかつな己を呪ったが、それもすぐにやめた。呪うという言葉も今は怖い。  小道に人影はなかった。  暗闇というのは、それだけで原始的な恐怖を喚起する。  暗がりの向こうに居もしない何かを思い描き、何でもない模様が人の顔に見えたり、木々のざわめきが人の声に聞こえたりする。  しかし、全ては幻想に過ぎない。そうだ、怖がることは何もない。  耳朶を舐めるようなか細い泣き声が聞こえたのは、折しもちょうどその時だった。  周囲十ヘクタールには響きそうな男の野太い悲鳴が木霊する。  飛び上がると同時に声のした方を見る。  視線の先で茂みが微かに揺れている。  自慢ではないが信仰心は薄い方だ。     
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